「そうかもだね」と返す。

そのあとから、じわじわと、バンド名の由来に感動してきた。


「だけど由来、おもしろいね。今までは普通に、”一緒にやろう”みたいな意味かと思った」


「あのメンバーが一緒にやろうってのも、よく考えたらちょっとやばいけどね」


カムに対して栞ちゃんは辛らつだ。
私は曖昧に頷いた。


そんな私の方を指さし、栞ちゃんが目を見開く。
どきっとしたのは一瞬。


「葉由のそのパン、新発売のやつだ!」


臆病な目で見たのは、輝いた瞳。
パンしか見ていないその瞳。


……びっくりした。何か間違えたかと思った。


「……うん。食べる?」


首をかしげて笑むと、栞ちゃんはうんうんと頷いた。


パンを栞ちゃんの口元に持っていく。期待を込めた唇が開く。あむっと音がしそうな可愛い齧り方。目が、輝いた。


「おいしいっ!」


「ほんと?よかった」


私も食べようと思って、口を開けかけた時。


「はーゆ」と頭上から声がした。


開きかけの口を閉じる。声の方を仰ぐと、大賀君が四階の窓から手と顔を出して、こっちにひらひらと手を振っていた。