「さっきはごめんな」


本気で申し訳なさそうな表情に首を横にふる。
眉間に皺を入れたまま私は 「……大丈夫?」と窺うように彼を見上げた。

「うん。あのあとちゃんと和解した」

「よかった……」

「ありがとね」


そう言いながら、大賀君の指がイヤホンをつまむ。そして、私の耳にきゅっと、イヤホンを差しこんだ。


そっちのほうの肩を竦める私のことを、彼は笑う。


「何が聴きたい?」

「大賀君がさっき、口ずさんでいた曲が聴きたい」


「あれは……。あの曲好き?」


「うん。切ない感じがすごく好き」


「切ない?」


「うん」


迷いなく答える私に、大賀君はきょとんとする。