ドキドキしている。温厚な彼があんなに怒っている姿が、衝撃的で。


カムの間に漂う空気は最悪だ。


「最近の大賀……違うじゃん。なんかあるんじゃないの?そういうの踏まえてさ、内海も笠間も、言いすぎだと思う」


栗原君が静かに言った。


「……大賀が一番頑張ってんのに」



ふたりに背を向けて歩き出す栗原君。大賀君とは逆方向へ行ってしまった。


……ばらばらに、なりそう……。


大好きな四人が、四方に行ってしまいそうな気がして。



気まずそうに床を睨む内海君と笠間君に、私は、いつの間にか叫んでいた。


「……追いかけて!お願い……!」


「いや、でも葉由ちゃんさ……」と口ごもる笠間君に、私は、らしくもなく追い打ちをかけてしまった。


「今しかないよ……あとまわしはだめだよ!絶対に後悔する!」


栞ちゃんもその声に加勢するみたいに。


「笠間君は大賀君、内海くんは栗原君を追いかけて!」


彼女らしいリーダーシップが、彼らを大きく指さしながら、指示を飛ばす。


「あーもう。わかったよ」と、後ろ頭を掻きながらしぶしぶ歩きだした笠間君。


何も言わずに、走り出した内海君。


私たちは、その背中を不安げに見送った。