床の木目模様に視線を落とし、「大賀君、どこいくの?」と、沈黙を掻きけす。


それなのに。


「……ふたりっきりになれるところ」


さっきの仕返しみたいに、意地悪く笑いながら言い放たれた、甘い言葉。


私の大敗だよ。負け続けだよ。

もう十分、大賀君に心臓を牛耳られているんだから。



たどり着いたのは、机が整然と並ぶ、薄暗い空き教室だった。


電気のスイッチに私の人差し指が触れた時。


「電気、つけなくていいよ」と、大賀君に手を攫われてしまった。


にや、と口角を上げる大賀君は「まだ時間あるからイロンナことできるね」と時計を目で指している。


イロンナ……。
その意図するところが分かった瞬間。
バシン。私は大賀君の手を振り払っていた。


心臓が一気に頂点まで速さを増していく。


「……痛」と顔をゆがめる大賀君さえ、色っぽく見える。