その様子をしばらく見ていた。
未だ動こうとしない大賀君を窺うように視線をずらす。


「どうしたの?」

「あ。ぼうっとしてた」


のんびりと歩き始めた彼を。例えば、追いかけなかったら。


……どんな反応をするんだろう。


そんな試すようなことを考えてしまうくらい、私には自信がない。


一歩、二歩。
離れていく、大賀君の後ろ姿。


「……ん」


たった二歩。
振りかえった彼は、ポケットに入れていた右手を、私に差し出した。


まっすぐと伸びたその腕に、独占欲のカケラがちらついている気がして。


「つながないの?」


文句っぽい声に、つい口許が緩んでしまう。


「……つなぐ」


恥じらいは、必死で隠す。
だけどどうやら、バレているらしい。



「そんなに毎回緊張されたらさ、」


くすぐったそうに笑う大賀君は、呆れ混じりの目を向ける。


「……俺にも移りそうだからやめて」


言い終わった頃には、私とは反対の床に視線を落としていて。


ほんのり火照った大賀君の横顔を、私は、見つけた。