どきっとした。
不意打ちだ。


あとすこしで、昇降口にたどり着きそうな、今このタイミングで、そんな話題をだされるなんて。油断していた。


「えぇー誰って……」


大賀くんは手元のスマホに夢中なのか、心あらずでそう呟く。


このまま。大賀君が私に気づかないまま。
ここを通り過ぎちゃえば、いいんだ。


意を決して素通りしようと階段を一段踏みこんだとき。



「この子。葉由チャン」


大賀君の目は絶対にスマホを見ているのに、しれっとこちらを指さした。


……気づいていたの?!


「ええええええええ!!!」


三人のよく通る低い声が、校舎に反響して耳に響く。


「へぇ、意外。今までとは違うタイプ」

クールにそう言った栗原君に、品定めするように上から下まで観察されている。


「葉由ちゃん、まじで大丈夫なの?だって大賀だよ?」

金髪の彼は眉間に皺を寄せ、心配そうにこちらを見る。


「めっちゃ可愛いじゃん!俺すげー好みなんだけど!大賀より俺の方が大事にするよ?」


そう笠間くんに詰め寄られて、後ずさりするように、上りかけの階段を一段降りた。