なんでって、そんなの。


「……すきだから」

それ以外にないんだから仕方がないけど、我ながら陳腐だ。


だから、付け足す。

「カムのライブを見て……すごく感動して、大好きになった」



わたしの震える声に、「ふぅん」と、大賀君は何か考えるみたいに宙を見る。


「今まで話したことなかったよね?でも噂で聞いてるのかな……?だいたい噂どおりだけど、大丈夫なの?」


「……大丈夫」か、どうかは、わからない。


けど強く頷く私に、大賀君はまた「ふぅん」と言う。


「あんまり、まともな子って俺んとこ来ないんだけど……。それともさ、葉由って見かけによらずビッチなの?」


「な、ないよ!絶対に……」


フルフルと首を横に振る。
そんな私を見て、大賀君はプッと吹き出した。



「なんか葉由って……。いいよ、付き合おうか」


……え、今。
なんて言った?


思わず目を見開く。


「……付き合ってくれるの?」


「ん?うん。いいよ別に」



にこっと微笑む、目の前の彼。
何だか現実的じゃ無さ過ぎる。


私は呆然と大賀くんを見ていた。



「じゃあ葉由、あらためて。これからよろしくね」


私の髪をクシャッとして、教室を去っていった。