「……へぇ、葉由みたいな子は、珍しいね」


突然真面目なトーンで、大賀君が言い放った。


これからよくない流れに進む予感をひしひしと感じて、どんどん情けない表情になっていく。


「そのウェーブした髪ってパーマじゃないよね、地毛でしょ?化粧もしてないし、大人しそうだし……制服なんか、規定通り」



胸元まで伸ばした髪を、大賀君の指先がすくったと思えば、すぐにはらりと宙に落とした。


私の視線は、大賀君の動きを追い始める。


上から下へと彼の視線が私を這っている。


全然、そっち、見られないくらい。


「顔見せてよ」

「え……」


私のなんか戸惑いなんてまるで関係なしに、顎をクイっとあげられてしまう。


「二重で黒目勝ちで、可愛い。けど」


褒められたドキドキを”けど”で見事に落とされる。


うーん、と首をひねる大賀君を見ていたら、不安でどうにかなりそうだ。

私の顔に今、生気があるのか心配になる。



「清楚で華奢で……多分、守りたくなる感じだよね」


ぷにゅっと間抜けな音がしそうなほど、強く両頬をつままれた。


「あ……あの」


一気に顔が熱くなる。誰かに血流まで操られる日が来るなんて、思ってもみなかった。


「顔赤すぎ……」


プッと笑ったのは一瞬。すぐに大賀君は真剣な顔をする。



「でもさ、こんな真面目そうなのに、なんで俺?」



両ポケットに手を突っ込んで、首を捻る大賀君は、怪訝そうに顔をゆがめる。