事態を見た葉由の両親が、すぐに葉由を精神科に連れて行った。


俺は葉由の家で、生きた心地もせず、帰りを待っていた。


そして、夕日が沈むころ。


葉由の両親から告げられた、葉由の状態は「解離性健忘」。


大きなストレスから身を守るために、都合の悪い記憶を消しているんだという。


俺と一緒に過ごした記憶すべてが……葉由には都合が悪いってこと?


「無理やり思い出してはいけないんだって。心を守るために忘れているから……自然な経過を待った方がいいって、先生がそうおっしゃってた」


俺は、思い出したらいけない存在なの?


「葉由が壊れてしまうかもしれないから……申し訳ないんだけど、もう会わないでもらえるか?」



葉由のお父さんが苦しそうにそう言った。



俺たちの一〇年分の全部が、なかったことになんの?



俺は……葉由の中から、消えるの?