「……私、中学は……不登校だったから」


言い切ってから、ごくっと唾をのむ。


スカートの上の両手の拳に力を入れて、ふたりを恐る恐る見上げた。


「そうなんだ。意外だね」


栞ちゃんがけろっとそう言って、西田さんも「それ高校受かったのまじですごくない?」と言う。


二人は大して戸惑わなかった。拍子抜けしてしまうほどに。


流す、という気遣いだとすれば、嬉しいと悲しいのちょうど間だ。


「不登校って聞いて……引かないの?」


だから私はわざわざ聞いてしまった。



「え?なんで?」

西田さんは首をかしげる。
逆に質問を返されるとは思っていなかった。


「だって、普通引くでしょ」


「ならあたし『普通』じゃないんかな?別に引かないけど」


「わたしも。葉由は葉由じゃんね?」


西田さんは「それ!」と栞ちゃんを指差した。


すとん、と。落ちた。
ずっと引っかかっていた重みが、一瞬で。


「……そっか」


二人はレッテルなんて貼らないんだ。
人を一言で済ませたりしないんだ。



そんな二人と今いる自分がなんだかちっぽけで、ちっぽけなりに、誇らしくて……。


ふたりのこと、好きだなぁ……。
そう心の底からおもってから、ふと、西田さんを見た。


「あの……西田さんは、私たちと一緒にいるのは、嫌?」


「え?嫌じゃないけど」


「そうそう、西田っち、こっちに入ればいいじゃん。わたしも葉由も仲間内で悪口とか、無いよ?」


「んー……でもなぁ」と西田さんは口ごもる。


中学からずっと仲のいい友達と、だもんね。


そう簡単に、乗り換えられるものじゃないんだろうな。


だけど。私は。


「……いつでも待ってるからね」


そう言うと、西田さんは何も言わず、深く頷いた。