音楽室の片隅。バイオリンを出して、三人で輪を作る。


「やっぱ音程とれないよー。葉由すごくない?葉由のバイオリンが特別いいやつなの?」


「こういう感覚的なのはセンスだよねぇ。無いなりに頑張ろうよ、西田っち!」



「無いとか言うな」


栞ちゃんに励まされて、弓を構える西田さんは、怖くなるくらい、いつも通りだ。


どうしてそんなに、平気そうにしていられるんだろう。


私はそっと、バイオリンをケースの中に置いた。


「葉由どうした?飽きた?」


そんなに明るく頑張ることが、正解なのかな。


私には、そういうの、わからないけど……。


「西田さん。我慢しなくていいよ。私……話なら聞けるし、できることはするよ」


真剣な顔でそう言うと、「普通にそういうの言われたら、なにこいつ無神経ってあたしは思うんだけど」


……やばい、間違えた。と思った瞬間。


「葉由に言われると……そう思えない。不思議」と言って、西田さんは笑った。