日陰のベンチに座る。食欲は、ない。

栞ちゃんは珍しく言葉少なだ。

絶対に、大賀君とのことを聞きたいはずなのに。


「あのね……大賀君とのことなんだけど」


口火を切った私に、「……いいの?」と間髪入れず、栞ちゃんは窺うようにこちらを見た。


「だってさっきは、葉由、“言えない”って言ってたから。辛いならいいよ?」

「ううん。栞ちゃんには言える範囲で、全部言いたい」


そうはっきり言った私に、栞ちゃんは溜息をつきながら笑みをこぼした。


「……聞く」

「えっと……なんかうれしそう?」

「あぁ、ごめん。不謹慎だよね……なんだけど。葉由がそう言ってくれるのが嬉しくて、つい」


ツインテールの毛先を触って、目線を横にずらす彼女。照れた顔って初めて見たかもしれない。


「さっき“それは言えない”って言われたの、実はめちゃくちゃショックだったから」


へへっと笑う彼女の傷ついたみたいな顔。ずきっと胸が痛む。


「ごめん!あれはそういう意味じゃなくて……!大賀君の事情で私からは言えないことがあるから……そういうことで……」


いつの間にか栞ちゃんを傷つけていたなんて。


それに、こんな場面でさえ、しどろもどろだ。


三年間、人間関係を学び損ねたツケが回ってきている。