すると「あのさ」と栞ちゃんが声を出した。


「わたしは見てないんだけど、大賀君の目、泣いた後みたいに腫れてたって……クラスの子が言ってたけど……」

「うん」


「まさか……別れた?」



頷く私に、「え……」と栞ちゃんの絶句はしばらく続いて、「そっか」と呟いた。



「でも……なんで?大賀君も葉由も泣くくらいなら……なんで別れるの?」


「大賀君が泣いたのは……私のことでじゃないから」


目が腫れるほど泣いたなら、それは、優ちゃんを想ってのことだから……。


「なにそれ?」


首を傾げる栞ちゃんに、なんて答えればいいのかわからなかった。こんな時、うまく答えられるほど、人間関係のあり方を学んでいない。



「……それは言えない」


栞ちゃんは何か言いたそうにしていたけど。「そっか」と言って、チャイムが鳴ると同時に、席を離れていった。