だけど、こんなにはっきり心の中に残る大賀君との時間。

ふわふわと浮き立つ気持ちをめいっぱい感じた1か月。

ここまで膨らんだ想いを、どうやったらなかったことにできるんだろう。



まだ人が少ない静かな教室に入った。

宿題のプリントを意味もなく広げて、やり過ごしている私の前に人影がさしこむ。


「おはよー!あれ?葉由目ぇ腫れてない?」


私の顔を凝視するのは、今日もアイメイクをばっちりきめた西田さん。
昨晩の涙で充血している私とは真逆の仕上がりに、苦笑しつつ視線を下げた。


「どうしたのそれ?」


「……大賀君と別れた」


もう語尾は泣きそうだ。


「え!?嘘……」


西田さんの黒く伸びたまつげが大きく上がった。


「なんで!?」



身を乗り出して訊ねる西田さんには申し訳ないけど、伝えられない。


今にも決壊しそうな涙が、きっと溢れてしまう。