「時間は戻らないし……命は返ってこない。だから……、今あるものだけは、無駄にしちゃいけないんだよ……」



だって、そうでしょ?何のために事故が起きたの?


ただ運が悪かった?


そんなわけないじゃん。
命を懸けて、蓮が教えてくれたんだ。


蓮の家族、周りにいる人、学校の人、事故のニュースを見た人……たくさんの人に命がけで教えたんだ。


“生きている”っていう今が存る、当たり前すぎて忘れていること。


二度と戻らない時間を、無駄にしちゃいけないこと。


本当は生きているだけで、十分だってこと。


命をかけて立ち止まらせて、蓮は私に、“生きること”を強くのこした。



「……ほんとだね」


大賀君はそう言って、泣きじゃくる私を抱きしめた。


「ごめんね……こんなに泣かせて」


溜息と共に出た、大賀君の震える声。


「葉由は……すごい。強いね。乗り越えた……?」


小さくなっていく語尾の涙声が、私の胸を抉る。



乗り越えたよ、と言ってあげられたら、大賀君に希望を見せてあげられる?



だけど、ごめんね。