ほんのりと香る薬と消毒の香り。
…優しい声。
美「………優也兄っ」
優「このバカっ!どこ行く気だったんだよ!」
優しい声ででも切なそうに優也兄はそう言った。
美「だって…迷惑かけ……」
優「いつ誰が迷惑だって言ったよ!!」
私が言っているのを遮るように優也兄が言った。
美「どうして…ここが分かったの?」
優「前に来たもんな。ここ。」
美「……覚えててくれたの?」
優「なんてな。前来たのは覚えてるけど、ここかもって言ったのは駿介なんだ。」
……駿介
本当隠し事できないな、駿介には。
優「本当美音の事は駿介には敵わないよ。さすが双子だよな。」
優也兄がそう言うと一瞬で桜庭さんの"種違いの兄妹"という言葉が頭をよぎった。
ポタポタと再び涙が溢れてくる。
「泣き虫。」
頭をぐいっと少し強引に胸元に抱き寄せられた。
心臓はドクンドクンと少し早くて、息も少し切れている。
美「………駿介。」
「もう無茶しちゃダメだろ?美音。」
美「……湊斗兄。」
私なんて放っておけばいいのに…
私だけちゃんとした兄妹じゃないのに。
それでも迎えに来てくれた。
正直すごく嬉しかった。
でも…
美「ごめんなさい……」
意識はそこで途切れた。