その瞬間、彼に腕を引き寄せられた。

私の耳に彼の吐息が触れてしまいそうな距離。

頭が真っ白になって動けない私に彼が囁く。

「君が何かに困ったら、また俺が助けてあげる。」

パッと身体を離して、じゃあね、とどこかへと去っていく。

固まって動けない私は、彼が見えなくなるまで呆然とその場に立ち尽くすことしかできなかった。

そして、蒸気する私の頬と同じくらい真っ赤なコサージュが、制服の胸ポケットに咲いていた。