「お頭たち、どこかへ行くのか?」
「ああ、野暮用だ。盗んだものを返しに行く」
「俺もついていく。今度お頭が殴られそうになったら、俺が盾になっからな」
こうして私はランディとノヴァ、ニコニコ弁当屋の面々とともに男の子の家があるソルトの町に向かった。
家を訪ねると男の子と一緒に父親が出てきたのだが、それがまさかの自警団のリーダーだった。
男の子のお父さんはランディとノヴァを見た瞬間、つかつかとこちらに近づいてきて殴りかかろうとした。
だが、拳が届くよりも早くランディが深々と頭を下げる。
「すまねえ、今日はそこのガキが大事にしてた母親の形見、返しにきたんだ。殴りたきゃいくらでも殴っていいが、まずはそれを返したい」
「お前……それだけのためにうちに? 報復しに来たんじゃないのか?」
拍子抜けしているお父さんの後ろにいた男の子は、それを聞いてランディの前に走り寄ると両手をお椀のようにして前に出す。
「お母さんの形見、返してくれるの?」
「おお、盗んで悪かったな」
ランディは腰を落とすと、男の子の手のひらに赤いルビーの指輪を載せた。
それを見た男の子は嬉しそうに顔をほころばせて、今度はぺこりと頭を下げた。


