異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~


「すみません、ランディの保釈金は私が払います」


お金を手渡せば、後ろから「いや、五百万Gだぞ? 正気か、嬢ちゃん」というランディの驚きの声が飛んでくる。

私は首だけでランディを振り返ると、小さく笑って見せた。


「正気だよ。あとね、これで人が見捨てるばっかりじゃないってこと、知ってほしい。手を差し伸べてくれる誰かが、必ずいるって信じてほしい」

「嬢ちゃん……はは、参った。年若いお前たちに諭されちゃ、面目が立たねえな。ありがとよ、心から礼を言うぜ」


ランディは丁寧に頭を下げると、取調室の空気が少しだけ柔らかくなった気がした。




「よう、戻ったぜ」


盗賊の住処に戻ってくると、ランディはあっという間に仲間たちに囲まれた。

それを遠目に見守っていると、隣にいたオリヴィエが密かに微笑んでいるのに気づいて、私は改めてお礼を伝える。


「オリヴィエ、今日はありがとう」

「は? なんであなたがお礼を言うんです?」

「だって私が言い出したことなのに、オリヴィエが盗賊の皆のことを助けてくれたから。あ、助けたんじゃなくて自分のため……とか、言わないでね」

「先手を打つとは、なかなかですね」


やっぱり、言うつもりだったんだ。

驚きに目を瞬かせるオリヴィエの顔には年相応の幼さがあり、私は彼の素に初めて触れられた気がして密かに笑みをこぼす。