「あなた方盗賊たちが農業や日用品の製造にご興味がおありでしたら、まずは弟子として職人のところで修行をし、ゆくゆくはうちの店に出す商品の作り手になるというのはどうでしょう」
それはアドバイスどころか、盗賊たちを新たな道の入り口に立たせる提案だった。
ランディは驚愕の表情のまま、オリヴィエを仰ぎ見る。
「なんで、そこまでしてくれんだよ」
「僕は孤児でしたから、あなた方のように盗みを働いて生きようと考えたことがなかったわけではありません。ただ、どんな生まれであろうと人は成功できる。周囲の人間に同情されるような惨めな生き方をするのではなく、羨まれる人間になってもらわなければ、僕の生き方も否定されたみたいで不愉快なんですよ」
あくまで自分のためだと言い張るオリヴィエだけれど、ランディはふっと目を細めて唇にほのかな笑みを浮かべた。
「お人好しだねえ、あんたら。だが、決めたぜ。一五年後、俺がここから出られたら、必ずあいつらに真っ当な道を歩ませるってな」
その答えを聞いた私は、ようやく安心して言えると口を開く。
「じゃあ今すぐやろう、ランディ」
「……は?」
きょとんとしているランディを無視して、私は法務官たちに向き直ると鞄から王様がくれた謝礼金を取り出す。


