異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~


「取引が成立する前に彼女に触れるのは、フェアじゃないと思うけど」


振り返らずともわかる。柔らかくも威圧感のあるこの声の主は──。


「エドガー……」


助けてくれた、そう思ったら安堵で目の端から涙がぽろりとこぼれ落ちる。

それに気づいたエドガーは、いっそう私を懐深くに隠すように引き寄せて「もう怖い目には遭わせないからね」と優しく声をかけてくれた。

その温もりにほっと息をついたとき、「うちの雪になんてことをしてくれてんのよ!」という声が聞こえて、私はエドガーの腕の中から後ろを振り向く。

すると、オリヴィエの足元に立っていたロキがこちらに走ってきて、ランディの顔面に張り付いた。

ランディはぐふっとうめき、周りにいた盗賊たちは「ウサギが喋った!?」と悲鳴をあげている。

辺りが騒然とし始めると、ランディはロキの首根っこを掴んで自分の顔から引き剥がした。


「喋るウサギなんて、面白いじゃねえか。よし、これで手を打ってやるよ」


ランディはロキを持ち上げながら、満足げに踵を返そうとする。

手を打ってやるって、ロキを引き渡せってこと!?

連れ去られていくロキに私は慌ててエドガーの腕の中から飛び出すと、ランディの腕にしがみつく。