「さっき、あの盗賊を倒してましたよね? 僕、ここら辺で薬草を積んでいたんだけど、さっきの盗賊たちに襲われて、お母さんの形見の指輪、取られちゃって……」
語尾は涙に湿っていて、私は慌てて男の子の前にしゃがみ込むとその小さな手を握りしめる。
「じゃあ、指輪を取り返しにひとりでここに戻ってきたの?」
そう尋ねると、泣いていた男の子はひっくと嗚咽をもらしながら大きく頷く。
我慢できずに私がエドガーたちを振り返れば、真っ先にオリヴィエは「まさか……」とげんなりした顔をした。
「人助けしに来たんですか、あなたは。違いますよね、お弁当屋を開くんではなかったんですか?」
「でも、こんなふうに頼ってきたこの子をほってはおけないよ」
「偽善も大概にしてください。第一、指輪を奪われたのは、その少年の自業自得では? 森に盗賊がいるのは、さほど珍しいことではありません。少し頭を使えば、危機回避できたはずです」
当然のことのように言ってのけるオリヴィエに、私は言葉を失う。
なら、ここでこの子を見捨てていけとオリヴィエは言うのだろうか。
どうして平然と、そんなひどいことを口にできるのかが、私にはどうしても理解できなかった。
彼の意見を受け入れることはできず、私はどうしたら納得してもらえるだろうと考えながら口を開く。


