「お人好しもここまでくると病気ですね。バルド、あなたはどうなんです? このまま、エドガーを連れて旅をしてもいいと思っていますか?」
私と話していても埒が明かないと考えたのか、オリヴィエはバルドさんに話を振る。
「旅をしていれば、盗賊のようなならず者に出くわすこともあるだろう。素性がどうであれ、戦力が増えるなら俺は構わん」
エドガー個人というよりは戦力という意味で必要としているらしいバルドさんの答えを聞いて、私はてっきりまたオリヴィエが呆れるか、怒るかすると思っていた。
だが、予想外なことにオリヴィエは腑に落ちたような顔をする。
「なるほど、エドガーとバルドは戦力として、僕は雪の商いがきちんと軌道に乗るように支援、雪はお弁当を作る。各々が自分の役割さえ果たしていればいいというわけですね。利害の一致というやつですか」
「俺たちは出会って間もない。なんでも話せるほど親睦を深めたわけでもないだろう。当面は個人的なことに踏み込むのを控えるのはどうだ」
バルドさんは揉めるくらいなら一定の距離間を保ったほうがいいと思ったのかもしれないけれど、踏み込むのをやめたら一生その人を知ることはできなくなってしまうのではないか。
そんな考えが頭をよぎりながらも、どうしたらバラバラの彼らと仲良くできるのかがわからず悩んでいると──。
「あ、あのっ、助けてください!」
どこからか聞こえてきた男の子の声に、私たちは同時に振り向く。
木の陰から怖気きった顔つきの十一歳くらいの男の子が姿を現すと、躊躇いがちに歩いてきた。


