「よう、俺はランディ・リアブロッド。『森の狩人』の頭領だ」

「森の狩人……この辺りで通行人から金目のあるものを奪い取っている盗賊だな」


バルドさんは森の狩人のことを知っているようだった。

さほど驚いた様子もなく、私たちを囲むように弓を構えている盗賊たちを睨む。


「だが、お前たちに渡すものなど、なにも持ち合わせていない」

「そんなに強気に出ちゃっていいのかよ? あんた、どういう状況かわかってる? あんたひとりなら無事でいられるかもしれねえが、その後ろにいるお仲間さんたちは俺の合図ひとつで蜂の巣だぜ?」


ランディと名乗った盗賊の男は、私たちをちらりと見て舌なめずりをする。

けれどもバルドさんは、私たちを背に庇うようにして前に出ると大剣を構えた。


「俺の背から出るな」


前を見据えたまま、私たちにそう声をかけるバルドさんを頼もしく思っていると、木の上にいたランディが「遊んでやれ」と片手を挙げてから倒す仕草をする。

その瞬間、弓を引き絞っていた盗賊たちが一斉に矢を放つ。

バルドさんは大きく地面に一歩を踏み出すと大剣を円を描くように横に薙ぎ、矢を全て叩き斬った。

それを額に手をかざして眺めていたランディは、ひゅうっと口笛を吹いてから「お見事」と拍手をする。

盗賊たちは矢が当たらないとわかると、短剣を構えてこちらに駆けてきた。