「お母さんと約束してたの。一緒にランチワゴンでお弁当屋さんをやろうって。でも、お母さん、事故に遭って死んじゃって……っ」
言葉を詰まらせると、エドガーの手が後頭部に回って優しく抱き寄せられる。
彼の胸から聞こえてくる規則正しい鼓動に、段々とさざ波立っていた気持ちが落ち着いてきて、私は込み上げてくる嗚咽を飲み込んで続ける。
「これからどうしようって悩んでたときに、この世界に来て……エドガーの家に来るまでは、お母さんのことを忘れられるくらい忙しかったから、よかったんだけど……」
「時間ができると、思い出してしまうんだね。母君のことを」
私は返事の代わりに、エドガーの腕の中で頷いた。
一度それを認めてしまったからか、目の奥が熱くなって、ぽろっと涙の粒がエドガーのベストに落ちる。
すると、エドガーはまるで子供をあやすように私の頭を撫でながら、穏やかな声音で問いかけてくる。
「雪はいつか、自分のいた世界に帰るの?」
「わからない……そもそも、どうやってこの世界に来たのかもわからないし、帰り方も知らない。もしかしたら、ずっとここにいるのかも……」
「……なら、帰り方が見つかるまで、この世界で母君との約束を果たしたらいいんじゃないかな」
その提案は予想していなかったので、「え?」と目を見張りながら顔を上げると、エドガーの柔らかな瞳に出会う。
その優しい表情に目を奪われていたら、彼の長く骨ばった指先が伸びてきて軽く私の下瞼を拭っていった。


