「それはオートモービルだよ。原動機……自然界のエネルギーを車輪を回転させる運動に変えて、地面を走らせるんだ」
難しい説明とともに現れたのは、着替えも済んで爽やかな印象に変わったエドガーだ。
私は隣にやってきた彼を見上げて、車のような乗り物を指差す。
「このオート……モービルって、エドガーが作ったんだよね? キッチンの冷蔵庫といい、ポットといい、リビングの大時計といい……エドガーって天才だよ!」
「でも、俺のしてることって結局、趣味の範囲で誰の役にも立ってないんだ。だから、無駄になってないかな?」
この言葉をどこかで聞いたような気がする。
自信なさげに笑って頭を掻く彼を見つめながら、記憶の糸を手繰り寄せていると、駐屯地で騎士の皆さんに『トマトカツ丼』弁当を振る舞ったときにも同じことを言っていたなと思いだした。
エドガーは『俺のしてることは、誰のためにもなってないよ』って言ってたけど……。
「エドガーの発明は生活を豊かにすると思うけどな」
「俺の発明が?」
「うん。だって、冷蔵庫がなかったら食材が腐っちゃうし、この世界で料理をしていて思ったんだけど、お米を炊くにも火を起こすにも時間と手間ががかかるんだよね。でも、エドガーの発明があれば新鮮なまま食材を保管できて食中毒になる人は減るし、料理ももっと時短できる! だから、人の生活に必要な発明だと思うな」
力説する私にエドガーは一、二回ほど瞬きをすると、口元を手の甲で押さえながらぷっと小さく吹きだした。


