城に戻ってくると、なぜか私とエドガーは王妃様と国王様に呼ばれて広間にやってきた。

そこにはバルドやオリヴィエ、ロキを抱きかかえたランディの姿もあり、何事だろうと戸惑いながらも彼らの隣に並ぶ。


「雪、これはあなたのレシピ本なのよね」


王妃様の手にはランチワゴンに置きっぱなしにしていたはずのお母さんの形見であるレシピ本があり、驚く。


「どうしてそれを王妃様が!?」

「ごめんなさいね。息子が興味本位であなたたちのランチワゴン? だったかしら。その中に入ったらしいの。そこでこのレシピを見つけて、うちのシェフに覚えさせてはと言い出して……」


まさか、これからあのレシピ本に書かれている料理をすべて、この城お抱えのシェフに教えろとでも言うつもりじゃ……。

ただでさえ、フェルネマータには一カ月も滞在している。

そろそろ旅が恋しくなってきたところだったので、そわそわしながら王妃様の言葉を待つ。