異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~

「いくらあなたの頭がよかったとしても、ひとりの脳みそで考えられることには限界があります。ここには他に五つの頭があるんですよ? もっと効率的に考えてください!」

「──って、オリヴィエは言ってるけどな、本当は『もっと仲間を頼れ』って言いたいわけよ」

「ランディ、勝手に略さないでください!」


どこかで聞いたやり取りだ。

なんだかんだ言って、実はオリヴィエがいちばん仲間を気にかけているような気がする。


「ごほんっ、もとに戻しますけど、この雪崩の被害で重要なのは避難できなかった原因を探ることではありませんか? ま、考えるまでもなく逃げる機会を誤ったせいでしょうけれど」


恥ずかしさをごまかすように咳払いしたオリヴィエは、床に散らばった障害物を避けつつエドガーの部屋の壁に貼り付けてあるフェルネマータの地図を指差す。


「ロドンの町はちょうど雪山の麓にあります。ですから、雪崩に巻き込まれやすい事実は変えられません。ですが、ロドンの町の東地区では建物が倒壊するほどの被害は出ていません」


その説明を聞いたエドガーは、はっとした様子でオリヴィエのところへ走っていくと地図を食い入るように見た。


「そうか……! 雪崩を事前に察知して町民に東地区に避難するよう知らせればいいんだ。自然災害を止めることはできなくても、これなら命を救うことはできる」

「だが、雪崩のたびに教会に身を寄せるわけにはいかないだろう。この東地区に避難場所を作るのはどうだろうか。常に食料と防寒具を置いておけば、突発的に起きた災害にも対応できる」


バルド助言に「それだ!」と私たちの声が重なり、なんだかうまくいきそうな気になる。

思わず拳を握りしめていると、私の前に改まった様子のエドガーが立った。