「ここっ、入口が狭すぎるんじゃなくて? ちょっと、そこのあなた。私を後ろから押しなさい」

「は、はい……」


私をここまで送ってくれた兵が王妃様の身体をぐいぐいと押すのだが、なかなか出てこれない。


「痛いっ、もっと優しくしてちょうだいっ」

「ですが、力を入れなければお腹の肉が……」

「あなたっ、私をデブだとおっしゃるつもり!?」


キッと兵を睨み付ける王妃様に、エドガーは呆れを含んだため息をつくと戸口に向かっていく。

それから脂肪でふっくらとした二の腕を引っ張り、なんとか王妃様は執務室に入ってくることができた。


「ふうっ、それで話の続きをさせてもらうけれど、エドガーにはお金が有り余るほどある国の王女と縁談を結んでもらうの。だから、一緒には行かせられないのよ」

「え……でも、エドガーは縁談が嫌で城を抜け出したんじゃないの?」

「城からロドンの町に物資の補給をする見返りに、国王が提案したの。それを吞んだのよ、エドガーは」


なにそれ……エドガーの良心を利用して、今度はお金を得るために他国に売るの?

今まで感じたことのない怒りで、握りしめた拳が小刻みに震える。

私は感情的にならないように、深呼吸をしてから静かに口を開く。