先輩、恋愛NGです!

-結衣side

どうぞ、そういわれとある部屋に入る。

電気をつけるときれいに整頓された部屋。


「ここって…」

「俺らの部屋!」


うちの事務所の人気タレントは部屋が用意される。

勿論私はない。


「ほとんど使ってないけど、涼太がきれいにしてるから。あー見えてきれい好きなんだよな、あいつ」

「あーみえてって…栗栖先輩は綺麗好きって感じしますけど?」

「いや、あいつは…何でもない」


何かを言おうとした先輩は慌てたように自分の口をふさいだ。

どうしたんですか?、そう聞くと何でもない、と額にうっすら汗をかきながら苦笑を浮かべた。

そんな先輩に違和感を感じたが、今の私にと手そんなことを気にしている暇ではなかった。

先輩は私をソファーに促し、私が座ったのを確認すると本棚からファイルを取り出した。


「えっと…これだな」

「え…これって!」


渡された紙は3枚つづりになっており、びっしりと書かれた文章の内容は数学のこと。

言わずもがなこれは数学発表会用の作文だ。

名前欄には“3年A組 日暮奏多”の文字。


「日暮先輩も代表者だったんですか?!」

「まぁね。今年から変わったんだけどよ、代表者はもともと成績上位の奴がやるものだったんだ。」
「…ってことは去年代表だった栗栖先輩も?!」

「あぁ、あいつもトップだったな。」


しれっといった先輩の言葉にめまいがした。

そんなにすごい人に何というお願い事をしてしまったのだろう。

確かに私も悪いほうではない。

しかし、トップなんて夢のまた夢だ。


「まぁ、成績なんてただの数字だ。気にすんな!」

「トップに言われても…」


明るく笑い飛ばしている日暮先輩を見ていたらどうでもよくなった。


「これでわかっただろ?俺も経験者、どうだ?」

「…お願いします」


そうこなくっちゃ、と私の頭をぽんぽんと撫でた先輩。

先輩のこと苦手だけど、嫌いではないし、それに今の状況は何としても抜け出さなくてはならない。
渋々ながら先輩に頭を下げた。