先輩、恋愛NGです!

-結衣side

「俺でよければ手伝うよ?」


たわいもない話をしていた時、自然な感じで言葉を発した先輩。

思考回路が停止し、思わず低い声で聞き返してしまった。

先輩は笑顔を崩さずもう一度同じことを言った。

あぁ、夢じゃない。それでやっと理解できた。


「い、いいんですか?!」

「困ってる後輩、見捨てられないでしょ」


何というイケメン発言。

これを素でやっているのか?と疑ってしまう。


「お願いします!」

「はい、お願いされます。」


その後、仕事が詰まっている先輩はマネージャーさんとその場を後にした。

その直後、満さんが小走りでやってきた。


「おまたせ!…ってアイドルらしからぬ顔してるけど」

「えへへ…」


自分でも顔が原形をとどめていないことがわかるくらい緩みきっている。

憧れの先輩の隣に座れただけでなく、これからも会う約束ができたのだ。

数学を教えてもらうのが目的だけど、それでもうれしい。


「文系でよかったぁ…」

「あ、知ってる?文系の人って単細胞らしいよ。」

「…満さん、それってどういう意味ですか?」


聞こえていないふりをする満さんをジト目で見つめる。

何かを思い出したように満さんは突発的に大きな声を出した。

身体で驚きを表現するかのように驚いた私。


「そうだそうだ、乃愛ちゃんビッグニュース!」

「なんですか?」

「決まったよ、ハロパの出演が!!」


見たことないようなキラキラした笑顔を私に向ける満さん。

その口から飛び出した言葉は信じられないものだった。


「うそ…」

「今社長に言われたんだ。おめでとう、これでたくさんの人に乃愛ちゃんを知ってもらえるね!」


毎年ハロウィンに行われる大注目アイドルが集まる生放送歌番組だ。

ハロウィン音楽祭、通称ハロパ。

それに選ばれるということはこれからが期待されているということ。

この番組の視聴率は目が飛び出すほどいい。

ここでのアピールがこれからの活動につながるといってもいいぐらい大きなイベントだ。


「これからはレッスンを増やすからね」

「はい!」


これからのうれしい忙しさに胸を高鳴らせた。