-結衣side
「話終わったみたいだよ、話しかけないの?」
「…」
事務所の人と話し終わったであろう先輩。
話しかけたい気持ちはやまやまなのだが、足が動かない。
「…涼太!」
日暮先輩は私の隣で栗栖先輩を呼んだ。
どこかに隠れなければ、そんなことは許さない、そういわれるようにがっちり肩をつかまれている。
日暮先輩の声に反応して栗栖先輩がこちらを見る。
「あぁ、奏多か。それと…」
「あ、う、え、っと…」
名前を言わなきゃ、そう思うのに緊張で声が出ない。
声にならない音が喉の奥から鳴っている。
そんな私を見かねたのか日暮先輩が先に口を開いた。
「この子、俺が審査員したオーディションで受かった子。」
「あ…小暮、結衣です!」
「小暮ちゃんね、よろしく」
通称王子様スマイルと言われるさわやかで優しい笑顔を向けてくれた先輩。
心の中で第一印象は合格だよ、と自分に花丸を押した。
「ほぉら、涼太に頼みごとがあるんでしょ?」
「あ、えっと、数学発表会のことなんですけど」
「数学発表会…あぁ!もしかして代表者?」
「はい…」
思わず苦笑いになりながら答える。
先輩に紙を渡すと懐かしい~、なんて言いながら笑っている。
「その、私数学がだめで…」
「よく引き受けたね!」
「あ、あはは…」
ぼうっとしていたらいつの間にか決まっていた、ということは恥ずかしすぎるから内緒にしておこう。
こんなことばれたら事務所中の笑いものだ。
真面目な満さんには絶対に怒られるだろうし。
「涼太は何発表したんだっけか」
栗栖先輩は去年発表してくれたことを詳しく話してくれたが、理数系が根本からできていない私は何を言っているのかさっぱりだった。
こんな感じかな、なんて話終わった後私をキラキラした目で見るものだから先輩は本当に数学が好きなのだろう。
私はというと先輩の言葉に、そうですね、なんてあいまいな返事をした。
「あれぇ、結衣ちゃん、今の説明わかんなかった感じですかぁ?」
「こんなこと言っちゃいけないってわかってますけど、先輩うざいです。あと、なんで名前呼びなんですか。」
「だって俺ら名字似てんじゃん?」
「だからってなんで…」
「まぁまぁ、俺らは深い仲じゃん?」
なんていいながら肩に手をまわしてきた日暮先輩。
丁重にその手を振り払って大き目のため息をついた。
「ふたりってそんなに仲良かったんだね」
「ち、ちが…っ!」
「そうなんだよ~」
私の反論にかぶせるように言ってきた日暮先輩を少しにらんだ。
もちろんそんな攻撃が日暮先輩に聞くわけもなく。
可愛い~、なんて頭を撫でられるだけだった。
「話終わったみたいだよ、話しかけないの?」
「…」
事務所の人と話し終わったであろう先輩。
話しかけたい気持ちはやまやまなのだが、足が動かない。
「…涼太!」
日暮先輩は私の隣で栗栖先輩を呼んだ。
どこかに隠れなければ、そんなことは許さない、そういわれるようにがっちり肩をつかまれている。
日暮先輩の声に反応して栗栖先輩がこちらを見る。
「あぁ、奏多か。それと…」
「あ、う、え、っと…」
名前を言わなきゃ、そう思うのに緊張で声が出ない。
声にならない音が喉の奥から鳴っている。
そんな私を見かねたのか日暮先輩が先に口を開いた。
「この子、俺が審査員したオーディションで受かった子。」
「あ…小暮、結衣です!」
「小暮ちゃんね、よろしく」
通称王子様スマイルと言われるさわやかで優しい笑顔を向けてくれた先輩。
心の中で第一印象は合格だよ、と自分に花丸を押した。
「ほぉら、涼太に頼みごとがあるんでしょ?」
「あ、えっと、数学発表会のことなんですけど」
「数学発表会…あぁ!もしかして代表者?」
「はい…」
思わず苦笑いになりながら答える。
先輩に紙を渡すと懐かしい~、なんて言いながら笑っている。
「その、私数学がだめで…」
「よく引き受けたね!」
「あ、あはは…」
ぼうっとしていたらいつの間にか決まっていた、ということは恥ずかしすぎるから内緒にしておこう。
こんなことばれたら事務所中の笑いものだ。
真面目な満さんには絶対に怒られるだろうし。
「涼太は何発表したんだっけか」
栗栖先輩は去年発表してくれたことを詳しく話してくれたが、理数系が根本からできていない私は何を言っているのかさっぱりだった。
こんな感じかな、なんて話終わった後私をキラキラした目で見るものだから先輩は本当に数学が好きなのだろう。
私はというと先輩の言葉に、そうですね、なんてあいまいな返事をした。
「あれぇ、結衣ちゃん、今の説明わかんなかった感じですかぁ?」
「こんなこと言っちゃいけないってわかってますけど、先輩うざいです。あと、なんで名前呼びなんですか。」
「だって俺ら名字似てんじゃん?」
「だからってなんで…」
「まぁまぁ、俺らは深い仲じゃん?」
なんていいながら肩に手をまわしてきた日暮先輩。
丁重にその手を振り払って大き目のため息をついた。
「ふたりってそんなに仲良かったんだね」
「ち、ちが…っ!」
「そうなんだよ~」
私の反論にかぶせるように言ってきた日暮先輩を少しにらんだ。
もちろんそんな攻撃が日暮先輩に聞くわけもなく。
可愛い~、なんて頭を撫でられるだけだった。
