翌日、放課後のホームルーム。


体育祭の種目決めが揉めに揉めて既に一時間が経過した。

高校生ともなれば体育祭など面倒なイベントの一つぐらいに思っていたが、どうやら少なくとも三組に関しては違うようだ。

誰がどの種目をやれば一番勝利に近づくのかを真剣に議論されている。
 
「正直、わたしは綱引きだけでいいよ」

わたしは暑苦しいクラスメイトたちを尻目に、隣の席の森さんへと小さく呟いた。

「綱引き? どうかなー、小柄な雫には不向きだと思うけど」

「でも徒競走に出たら絶対どんけつだし、負けても目立たない種目がいいよ」

「最初から負ける事を想定するなんてダメよ。やるからには勝ちに行かないと」

森さんは熱くわたしを説き伏せる。

彼女は普段おっとりしているが、意外と勝ちに拘るタイプの様だ。
 
最終的に、運動の出来る生徒から勝利ポイントの多い種目に当てはめていく形となった。

蓮はクラス対抗リレーと徒競走に二人三脚。そして全員参加の騎馬戦と四つも出ることになっている。

わたしは騎馬戦と二人三脚だけだ。

まあ、一人で出る種目で無いのが幸いだ。

負けても二人ないし四人の責任になるのだから気が楽である。

しかも騎馬戦、二人三脚どちらとも、捨て石のメンバーで構成されている。
 
「ゴメンね雫」

「別にいいよ。森さん足速いし、蓮となら一位間違いなしだからね」

「本当に怒ってない?」

森さんは申し訳無さげにわたしを見やる。

クラスの女子の中で一番足が速い森さんは、二人三脚のパートナーが蓮となったのだ。

怒ってはいない。只、悲しいだけだ。恨むはわたしの運動神経の無さなのだから仕方ない。