乱れた髪を後ろに一つ結び、ふらふらとした足つきで家を出た。



ゾンビ映画の廃墟を漂うゾンビにでもなった心持ちだ。



小さな歩幅で向かうのは皆んなが集まるライブハウスだ。ライブハウスと言っても父が趣味程度に所有している粗末な建物である。



 
「なあ、あのお姉ちゃん見てみなよ。顔面蒼白だぜ。彼氏にでも振られたんじゃね?」




前から歩いてきた小学生が、にやけた顔で私の憔悴しきった感情を煽ってきた。



手負いの中学生の恐ろしさを教えてやるか? 



いや、小学生とはいえ相手は男。小柄な私ではやられてしまう可能性がある。
ここは歳上として大らかな気持ちで許してやろう。



 わたしは脳内シミュレーションの結果、ゾンビのままで通り過ぎる事にしたのだ。