私、宮橋 雫(みやはし しずく)は目の前が真っ暗となり、時間の概念から淘汰された世界に身を転じている。




A4用紙を持つ手は、無意識にガクブルと震えている。
 



「お、終わった……よ」




中学三年にして私が夢見た高校生活は、紙切れ一枚で閉ざされた。



無理して受験した最難関の公立高校。––––そう、私は受験に失敗してしまったのだ。



配達員から受け取った受験結果通知には合格の文字は無く、記載されているのは、小賢しい文面でわたしの入学を拒否る文書のみだ。



何時もは賑やしいリビングで一人、厳しい現実に打ちひしがれているのだ。


「夢かな? 夢だよね」



そう言い聞かせて自身の右腕をギュッとつねってみた。あんまり痛くないや。やっぱり夢?



……嫌々、現実逃避している場合じゃない。これは夢で無く紛れもなく現実なのだ。



深呼吸をして静かに結果を受け入れた。



壁掛け時計の針音がやけに耳を触る。ふと目をやると時間は十五時。



不合格通知を受け取ってから二時間が経過していた。



それは私が結果を受け入れるのに所要した時間だ。