人から敵意を向けられることは、慣れているかといって、やっぱり怖い。
だから、あの時。
「律くんが、みんなが、来てくれて嬉しかった。律くん、ありがとうっ」
笑顔を向ければ、律くんは一瞬目を見開いて。
「....お人好しすぎだから」
ふっと目を細めながら、やわらかい笑みを浮かべた。
....っ、あ、れ。
やさしすぎるその笑顔を見た瞬間、込み上げてくる涙。
ゴシゴシと目を擦っても、涙は止まらなくて。
自分でもなんで泣いているのかわからない。
恐怖とも違うような、さっき感じたときと同じ''不思議な感覚''。
「我慢しなくていいから。....おまえはもっと甘えることを覚えて」
再び抱き寄せられたかと思うと、ぽんぽん、と頭を撫でられる。
まるで、''大丈夫''と安心させてくれているような、やさしい手つき。
「う....っ、うぅ....っ」
人前で泣くのは、苦手なはずなのに。
昔からの癖で、なんとなく人前で泣くことができない。
なのに、なんでこの人の前では泣き虫になるんだろう....。
────その答えが分かるのは、もっと先のこと
