「...大丈夫か、未桜」
視界に映るのは、ひどく焦った顔をした律くんで。
彼に庇ってもらったのだと、気づくのに少し時間がかかってしまった。
「り、つくん....?」
「お、桜雅くん...っ!?」
驚いているのは、私だけではなく。
矢島さんたちも、目を真ん丸に見開きながら律くんを凝視している。
「...おまえら、未桜に何しようとした?」
「...っ、べ、べつにあたし達はなにもしていませんけど」
地を這うような律くんの低い声に、矢島さん達はビクッと肩を震わせながら、分かりやすく視線をずらす。
「苦しい言い訳は辞めたら?すっごーく見苦しいから」
再び背後から声が聞こえて──振り返ってみれば。
「なんで、みんながここに....」
「ヒーローは遅れてやってくる....なんちゃって」
ペロッと舌を出しながらお茶目に笑う湊くん。
だけど、その目線はひどく冷たくて。



