それに、律くんは大企業の御曹司という立場。
これからの日本を動かしていく存在として、たくさんのことを強いられてきたんだろう
その証拠に、私は見てしまった。
あの、律くんの車で送ってもらった日。
律くんの鞄のなかに入っていた何冊もの経済関係の書物。
明らかに高校生向けではない''それ''。
そっと覗いてみると、破れかけたページや、たくさんの付箋が挟まっていて。
律くんがたくさんの努力が、詰まっているようだった。
それは、たぶん他のひとたちにもいえること。
成績優秀な彼ら──由良くんも、湊くんも、みんな影で努力しているんだろう。
......その努力が、どれほど苦しくて、大変で、重たいものなのか、私は知っている。
その過程を、''才能''なんて言葉で一括りにしないで。
「っなんなのお前!地味子のくせに生意気なんだよ....っ!」
「......」
振り上げられた手を見て、叩かれると瞬間的に悟る。
....何で私、こんな冷静なんだろう....。
自分でもわからない不思議な感覚に導かれるように、目を閉じたそのとき。
「未桜....っ!」
───え?
聞き覚えのある声に名前を呼ばれたかと思うと、ぐいっ、と引っ張られる腕。



