「遠慮はナシ。未桜はおれの、....だろ」
「.....?ちょっときこえない、です」
「っ、だから、みおは、」
突然、ぐ、とお互いの顔の距離を詰めてきた律くん。
思わず身体を後ろに引く....間もなく、落とさしこまれた声に制された。
「彼女だろ、.....ばーか」
「っ、.....ぅ」
照れかくしみたいに付け足された、''ばか''
いつものばかにした感じとは違う、....な、なにきゅんとしてるの私....!
カノジョといっても、仮....なのに。
そんなやさしい顔を向けられたら、なにも言えなくなってしまうじゃないか。
なんだか居たたまれなくなって、視線を下にさげると。
「ちょっ、なにしてっ....!」
律くんの手が触れたかと思うと、ぎゅ、と柔い力で握られる。
そうして、触れあった指先を、ゆっくりと絡められる。
恥ずかしかったことも忘れ、反射的に律くんを見上げると。
「やっとこっち見た。目、逸らすの禁止だから」
どこか挑戦的なその瞳は、なにを考えているのか全く分からなくて。
「な、に、っぅ.....あ」
唸ることしかできない私は、ふっと色気ダダ漏れな笑顔を向けられ、一発KO。
これから、夏休みまでこの席だなんて....。
心臓、こわれる.....!!
そんな心配をしていた私は、気づかなかった。
「あー...も、....かわい」
隣で、律くんがそんなことを呟いていたことを。



