「ひぁ....っ」
ゾクリ、って。
襲ってきた始めての感覚に、恥ずかしい声が漏れる。
み、耳、噛まれ....っ?
「ほら、呼べよ」
鼓膜から流れこんでくる熱い吐息と甘い低音に、そっと脳を揺さぶられる。
もう、なにがなんだかわからない。
だからなのか、律くんの命令に従うことしかできなくて。
「律、くん....っ」
恥ずかしさのあまり、ジワリと涙が浮かぶ。
自然な上目遣いで、名前を小さく呟けば。
「....未桜が名前で呼ぶの、俺だけでいーな」
....さ、さっきと言ってること違うけど。
桜、じゃなくて.....、律くんは頬を赤く染めながら、笑った。
とってもやわらかい、嬉しそうなカオ。
....名前、呼んだだけなのに、なんでそんなにやさしい表情するんだろう。
ドクン、って心臓が鳴ったのは、至近距離からの条件反射だ。
そこでやっと手を離してもらえて、この体勢から解放された。
律くん、ひととの距離感に問題あるとオモイマス....。
バクバクと鳴る心臓は、当分収まることはないだろう。



