「敬語は無意識というか.....。私、男の人のことを名前で呼んだことないので」
おずおずと口を開く。
というか、あまり男のひとと関わる機会がなかったのだ。
こんな地味でブサイクな女に好んで近づく男のひとはいないし、私自身あまり異性に興味がなかった。
だから、そんなことを言われたのは初めて。
「じゃあ、これから俺たちの事名前で呼びな?
もし名字で呼んだり、敬語使ったりしたら────」
途中で言葉を切らしたかと思うと、急に顔を近づけて、唇を私の耳へと寄せた。
耳に感じる桜雅くんの吐息がくすぐったくて、びくりと身体を震わせる私。
そして、くす、と妖艶な笑みを浮かべた桜雅くんは。
「こーするから」
少し湿った唇が、耳に押し付けられた。
耳たぶをやわく噛まれて、なぞるように首筋を指で触れて。



