「....ほんと、そーゆーのいいから」
桜雅くんたちはこの光景に慣れているのか、驚くこともなくしれっと返事を返す。
....ついていけてないの、私だけ?
「あの、律さん。その子は....?」
すると、私に気づいた男の人が不思議そうに口を開いた。
「....っ、えっと」
途端に、たくさん集まる視線。
目立つことに慣れていないからか、じっと動けなくなってしまう。
その子は、っていう男の子の質問に対して、なんて答えたらいいんだろう....。
妥当なのは、つい最近知り合ったクラスメートです、かなあ。
「っわ、わたしは桜雅くんの────っ、ぅ.....?」
頭のうえに置かれた手のひらが前髪のあたりをすべり、流れるように身を引寄せられるから、おもわず言葉を止めてしまう。
とんっ、と顔が固いなにかにあたって、ふれた部分からほんのりと伝う体温、それから、香るムスクの甘い匂い。
閉じ込めるみたいに腰の辺りに回された両腕から、ぎゅ、と柔い力をこめられて、それで。
「.....ん。この子、俺の彼女」
──────あまりにもやさしい声色。まるで縛られたみたいに、頭も身体も動かない。
おれの、かのじょ.....そっか、彼女かあ。
どくん、どくん、って。耳のあたりで激しく響いてくる心音に、はっと意識を戻された。
「か、っか、のじょ.....!?」



