気づいたときにはもうイスの上にいて、桜雅君に持ち上げられたのだと、理解するのに数秒。
「ふはっ、顔赤すぎ」
しまいにはそんな指摘をされて、恥ずかしくてたまらない。
じわりと頬が火照る。
「あり、がとう....ごさいます」
この返事が精一杯だ。
それが伝わったのか、桜雅くんは面白そうに笑うと、私の頭にヘルメットをかぶして、バイクを発進させた。
「ひゃ....は、速いっ」
あまりのスピードに、ギュッと桜雅くんの背中に抱きつく。
「そのうち慣れるだろ」
「慣れる?」
桜雅くんは一瞬ビクッと体を震わせると、そんなことを言ってくる。
慣れる....なんて、バイクに乗るのは、これが最後だろう。
呑気にそんなことを考えていた私は、知らない。
────その考えは、後にあっさり崩されることを



