「っ、え....」
思わず漏れた声を、あわてて手のひらで押さえた。
部屋の奥のソファーに、見覚えのあるシルエット。
そろり、そろり、と忍び足で少しずつ距離を詰めると────ああ、やっぱり
「律くん、寝てる....?」
グレーのソファに寄りかかって、穏やかな寝息をたてている''彼''
おそるおそる近づいて、顔を覗き込んでみると。
しっかりと閉じられた瞳から、影をつくるほど長い睫毛がふわふわと揺れている。
すこしだけ開いた唇から、スー、と穏やかな吐息がこぼれていて。
「っ、」
あどけない、無防備な姿から、目が離せない。
ぎゅうっと心臓が緩く掴まれたみたいに、熱と一緒に柔い痺れが生まれる。
─────触れたい、とおもった
気づいたら、手を伸ばしていて。
さらさらな黒髪に、上から沿うように手のひらを這わす。
すると、ぴょこん、と一ヶ所だけ跳ねているところを見つけて、笑みがこぼれる。
....律くんの寝癖なんて、はじめて見た。



