ひゅ、と息がつまって、ぐらりと視界が揺れたような気がした。
「そっか.....」
私は8年前のことを忘れていた....というか、思い出さないように、と無意識に封じ込めていた。
「知らない男に突然襲われた、なんて子供からしてみたら精神的ショックは計り知れない。
.....運ばれた病院で目が覚めたとき、未桜からは事件の記憶が抜けていた」
「....わたし、」
「無理に思い出させようとしても、脳に負荷がかかると医者にも言われてたんだよ。....俺と莉子も、未桜をこれ以上苦しめたくなかった。未桜が事件のことを思い出しても辛い思いをさせるだけだ、って」
ぎゅっと握っていた手のひらを、お父さんの手のひらにゆっくりと解かれる。
俯いていた顔を上げれば、やさしい笑みを浮かべるお父さんとお母さん。
....ずっと、ふたりは私のことを考えてくれていたんだ。
「警察の調べで、犯人は''香山 達二''の可能性が高いと分かったんだよ。....だが、物的証拠に欠けていたからか、どうしても逮捕することが出来なかった」
だから、お父さんは個人的に''香山達二''を調べていた。
わざわざ弁護事務所に依頼して、この8年間ずっと。



