◆◇
「未桜」
やさしく微笑んだ影が、黒で埋め尽くされていた視界に、飛びこんでくる。
....その姿を目にした瞬間、とてつもない安心感がこころを満たして、冷えていた部分に熱を灯してくれる。
「....りつ、くん」
じわりと目頭が熱くなって、視界がぼやける。
──────来てくれるって、わかってた
私には手を差しのべてくれるひとがいる、そうわかってたから。
「桜雅....っ、なんでオマエがここに───ッウ、」
「....おまえは一回死んどけ」
私の肩を掴んでいたはずの中村さんが、あっという間に吹っ飛ばされる。
ゴンッ、と床に叩きつけられた音がした。
上向きに倒れこむ中村さんの鳩尾に一発蹴りを入れた律くんが、私に覆い被さったままの香山に視線をよこす。
「─────退けよゲス野郎」
すうっと細められる切れ長の瞳の奥に佇むものは、怒り。



