『おまえは強いから』


『....私、大丈夫だ』


あの日の会話を思い出して、ずくん、と重たいものが落ちてくる。


口先だけの、ほんとうは''弱い''私に、律くんは呆れてしまっても無理はない。


.....律くんにだけは、見放されたく、ない。



「っほ、ほんと、ごめんなさ....っ。私、弱くて....こわくて、なにもできなくて。だから、私────「な、未桜」


やさしく、遮られた言葉。


紡ぐみたいに呼ばれた名前に、思わず黙った私。


「俺、未桜が初めて倉庫に来た日言ったこと覚えてる?」


『あんまり自分を卑下するな。おまえは、綺麗だよ』


.....忘れられるわけ、ない。


私があの言葉にどれだけ温もりとやさしさをもらったか、きっと律くん知らない。



「もちろん、っおぼえてる.... 」


「ん、そっか」


「ふふ、うんっ....」


思ったよりも大きな声で答えた私に、くす、とちいさく笑った声が電話の向こうから聞こえた。


つられて、私も笑ってしまう。