なにも言わない私に冷めきった視線を向けながら、ふ、と見下したように笑う。


縛られている手を重ねると、熱のせいか温かかった。


なんとか平常心を保ちながら、顔を覗きこんでくる香山に視線を合わせる。


....真っ黒で、濁った瞳。


「こんなことして、意味があるんですか....?」


震える声で問いかけた私に、香山は表情をなくして、すうっと目を細めた。


目尻に刻まれていく太い皺に、8年前のあの時と同じだ、と思った。



「意味はある」


そのまま、首に手をかけられて、ぐ、と弱い力を込められた。


「....っ、」


「お前らの絶望に落っこちたカオ見るためなら、俺はなんだってしてやる」



─────このひとは、狂っている


「俺の全てを奪ったあいつの、一番大切なものを奪ってやるんだよ」


「っ、い....っ」


首筋に鋭い痛みが走って、手が離された。


爪で引っ掛かれた部分から、じわ、と血が浮かんでくる。