「───香山が捕まれば、全てが終わる」
落ち着いた、ひどく冷たい響きだった。
憎々しさを織り混ぜたような、ちいさなお父さんの声。
それに、お母さんはこくん、と頷いて、そんなお母さんをぎゅっと抱きしめるお父さん。
あまりにも辛そうなふたり、なにも覚えていない自分。
そのふたつが複雑に絡まって、解けない。
一体、私と香山の間になにがあったというんだろう。
''あの男''、つまり香山が、私を傷付けた?
いつ、どうやって?
───なんで私は、なにも覚えてないの?
今、ふたりに問いかければ、私の欲しい答えをくれるだろうか。
「....っ」
じわり、と芯から湧いてくる恐怖。
次の瞬間、桜蕾の倉庫に居たときに感じた激しい頭痛が襲ってきて。
「ぅ....っあ」
身体がぐらんと揺れて、視界までぼやけてきた。
体調を崩しているからか、この前よりもずっと辛くて、キツい。



