だ、誰のせいだとっ.....!


最大級の睨みをきかせたつもりだったけど、至って桜雅くんは余裕な笑み。


「俺にそんな顔すんの、未桜が初めて」



ふわり、と柔い笑みで、涼しく細められる目元。


その言葉に、表情に─────ドクリ


「いま、名前.....っ」


やさしく紡がれた、''未桜''という言葉。


男のひとに名前を呼ばれるのは初めてで、戸惑いが隠せない。


っ動揺、しすぎ自分......!


だって、顔もかっこいいのに声までなんて.....、予想の斜め上をいくから。


「なーに、未桜」


耳元で囁かれる甘ったるい低音に、ぶわっと顔が火照る。


「き、きゅうになんで....?」


ぎゅっと唇を噛み締めながら、こちらを向く桜雅くんに首を傾げる。



「....、なんとなく」


「っ....、そうですか」


私には到底、桜雅くんの考えていることなんて、わかるはずもなくて。


窓から吹いてきた春の風が、ふわり、やさしく髪を揺らした。